企画1

□KENDO
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傷ついて人は優しくなれるっていうけど

なんで傷つかなきゃいけないのかな

なんで傷つけるの

なんで傷つけられるの

なんで優しくなれないの

誰かの上に成り立つ幸せ

そんなもの

幸せなんかじゃない

平和なんかじゃない









KENDO








あいつが俺の腕の中で泣き崩れてから…



あいつは…学校にも部活にも…









姿を見せなくなった…







桜が舞う季節になっていた…






「そおか…」

銀八に高杉の様子を聞かれた土方は、担任である銀八には知らせておかないと思
い、すべてを打ち明けた。

「大人って…勝手ですね…」

「全ての大人がってわけじゃねぇよ…でも…勝手なのかもな…」

「……」

「あいつ…どうしてるんだろうな…一度会いに行かなきゃいけないな…」

「俺……」

「どうした?」

つぶやきかけた土方が口をつぐんだ。

「俺…あいつに会えません…」

「……」

「俺の腕の中であいつは泣きました…俺は…あいつに何もしてやれなかった…た
だ、抱き締めてやることしか…あいつは、一人にしてくれって俺にいいました…
俺は拒絶された…怖いんです…」

「土方…」

「俺…拒絶されたからって帰っちゃいけないって…頭では分かってたんです…で
も、夏合宿の一件とかで、あんなに高杉に嫌われることが怖いって知って…怖か
った…会いに行けば…また拒絶されるって思うと…会えなくて…でも、あいつの
気持ちを考えると…か…悲しく…なって…きちゃって…」

泣いてることすら分からない土方はただただ握りしめた拳に涙を溢していた…

その涙が他人の物のように見つめながら…

「土方…」

「なんで…傷つけられるんですか…親なのに…一番自分を愛して守ってくれるは
ずなのに!!」

「土方…」

銀八は抱き締めてやりたくなった。もぅ泣かなくていいよと…だが、その思いを
引っ込め、土方の頭に手をおいた。

「土方…大人は勝手なんだ…自分の立場が弱くなったら、まわりなんてそっちの
けで、自分の保身にまわる…世間は冷たい…誰も助けてくれない…でもな、子供
に愛をあげれるのも大人で抱き締めてあげれるのも大人なんだよ…」

「先生…」

「だから、土方…お前はそんな大人になっちゃいけない…優しい…思いやりのあ
る人にならなきゃいけない…」

「………」

「人は誰しも傷つくし傷つけてしまう…それが人だから…だからって、人を遠ざ
けちゃいけない…人は一人では生きていけないから…今…お前は確実に傷ついて
いる人を知ってる…だろ??」

「はい…」

「じゃぁ…見てみぬふりはしちゃいけない…それが…友達なら…愛する人なら…
なおのこと…」

「先生…」

「それに…もうすぐインターハイ予選だろ?」

「………そぉですね…近藤さんも…そんなことを…」

言っていたな…

俺の様子を気にして高杉の事は聞いてこなかったけど

気にしてたの…いまなら分かる…

「俺は…お前らにいい思い出を作ってもらいたいんた。楽しかったって。その為
にもあいつには…この試合にでてほしい…」

インターハイ予選…この試合で負けると俺達の高校の剣道生活は幕を閉じる…終
わってしまうんだ…

「先生…」

「だから、土方…あいつを引っ張り出してこい…」

「先生…」

「お前にしかできない…でも、お前ならできる…」

「……はい……」

土方の拳に力が入った…

お前なら…できるか…



「それに…高杉がいないと俺としては、らいぶぁるが減るから嬉しいんだけど☆


「はっ?」

「でも、お前泣くもん…銀さん耐えらんないん☆」

と銀八は思いっきり土方に抱きついた。

「なっ…何やっとんじゃぁぁぁ!ボケェェ!!」


「ヒデブー!」

弧を描いて飛ぶ銀八…

「はぁ…はぁ…バカにすんのも大概にしてくださいよ!」

土方はそう言い残すと、くるりと向き直り、扉に手をかけた…

「土方〜」

「なんですか?」

「がんばれよ…」







背は押してもらった…








今度は…俺が…助けに行くよ…








続く
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